アスベスト

中皮腫、肺がんなどを発症し、それが労働者として石綿(アスベスト)ばく露作業に従事していたことが原因である(業務上疾病)と認められた場合には、労災保険給付または特別遺族給付金が支給されます。

石綿による疾病 認定基準

(1)石綿肺

認定基準
石綿ばく露労働者に発症した疾病であって、じん肺法に規定するじん肺管理区分(管理1~4)に基づき、以下の①、②のいずれかに該当する場合、業務上の疾病と認められます。
なお、原則として、都道府県労働局長によってじん肺管理区分の決定がなされた後に、業務上の疾病か否かが判断されます。
①管理4の石綿肺(石綿肺によるじん肺症)
②管理2、管理3、管理4の石綿肺に合併した疾病※
※合併した疾病とは、次の疾病をいいます。
◆肺結核
◆結核性胸膜炎
◆続発性気管支炎
◆続発性気管支炎拡張症
◆続発性気胸

(2)中皮腫

認定基準
石綿ばく露労働者に発症した胸膜、腹膜、心膜または精巣鞘膜の中皮腫であって、じん肺法に定める胸部エックス線写真の像の区分(第1~4型)または石綿ばく露作業従事期間が、以下の①、②のいずれかに該当する場合、業務上の疾病と認められます。
ただし、最初の石綿ばく露作業(労働者として従事したものに限りません)
を開始したときから10年未満で発症したものは除きます。
①胸部エックス線写真で、第1型以上の石綿肺所見がある
②石綿ばく露作業従事期間1年以上
②石綿ばく露作業従事期間1年以上
※中皮腫は診断が困難な疾病であるため、認定に当たっては、病理組織検査結果に基づき、中皮腫であるとの確定診断がなされていることが重要ですが、病理組織検査が実施できない場合には、臨床検査結果、画像所見、臨床経過、他疾患との鑑別などを総合して判断されます。

(3)肺がん

認定基準
石綿ばく露労働者に発症した「原発性肺がん」(原発性とは、他の部位から肺に転移したものではないという意味)であって、以下の①から⑥のいずれかに該当する場合に業務上の疾病と認められます。
ただし、最初の石綿ばく露作業(労働者として従事したものに限りません)を開始したときから10年未満で発症したものは除きます。
①石綿肺所見※がある
※じん肺法に定める胸部エックス線写真の像が第1型以上である石綿肺所
見をいいます。
②胸膜プラーク所見がある+石綿ばく露作業従事期間10年以上※
※石綿製品の製造工程における作業(3ページの2③)については、平成
8年以降の従事期間を実際の従事期間の1/2として算定します。
③広範囲の胸膜プラーク所見がある※
+石綿ばく露作業従事期間1年以上
※広範囲の胸膜プラークとは・・・・
◆胸部正面エックス線写真により胸膜プラークと判断できる明らかな
陰影が認められ、かつ、胸部CT画像によりその陰影が胸膜プラーク
として確認される場合
◆胸部CT画像で、胸膜プラークの広がりが胸壁内側の1/4以上ある
場合
④石綿小体または石綿繊維※の所見
+石綿ばく露作業従事期間1年以上
※石綿小体または石綿繊維の所見については、以下のいずれかであることが必要です。
◆石綿小体が乾燥肺重量1g当たり5,000本以上ある
◆石綿小体が気管支肺胞洗浄液1ml中に5本以上ある
◆5μmを超える大きさの石綿繊維が乾燥肺重量1g当たり200万本
以上ある
◆1μmを超える大きさの石綿繊維が乾燥肺重量1g当たり500万本
以上ある
◆肺組織切片中に石綿小体または石綿繊維がある
⑤びまん性胸膜肥厚に併発
次のページに示すびまん性胸膜肥厚の認定要件を満たすものに限ります。
⑥特定の3作業※1に従事
+石綿ばく露作業従事期間※2 5年以上
※1「特定の3作業」とは・・・・
◆石綿紡織製品製造作業 ◆石綿セメント製品製造作業 ◆石綿吹付作業
※2「従事期間」とは・・・・
上記3作業のいずれかに従事した期間、またはそれらを合算した期間
をいいます。ただし、平成8年以降の従事期間は、実際の従事期間の
1/2として算定します。

(4)良性石綿胸水

認定基準
胸水は、石綿以外にもさまざまな原因(結核性胸膜炎、リウマチ性胸膜炎な
ど)で発症するため、良性石綿胸水の診断は、石綿以外の胸水の原因を全て除外することにより行われます。
そのため、診断が非常に困難であることから、労働基準監督署長が厚生労働本省と協議した上で、業務上の疾病として認定するか否かの判断をします。

(5)びまん性胸膜肥厚

認定基準
石綿ばく露労働者に発症したびまん性胸膜肥厚であって、肥厚の広がりが
下記の一定の基準に該当し、著しい呼吸機能障害を伴うもので、石綿ばく露
作業従事期間が3年以上ある場合(以下の①~③全てを満たす場合)に、業
務上の疾病として認められます。
①石綿ばく露作業3年以上
②著しい呼吸機能障害がある
◆パーセント肺活量(%VC)が60%未満である場合 など
③一定以上肥厚の広がりがある
胸部CT画像上に
◆片側のみ肥厚がある場合 → 側胸壁の1/2以上
◆両側に肥厚がある場合 → 側胸壁の1/4以上